忍の茶会(short)

「たまにはこうして茶を啜るのも、悪くないねぇ」

「本当、玉露じゃないのが残念」

 「………」

軒吊家のお屋敷にて、三人の男女が細やかな茶会を開く。

 

「アヤメ様に貰ってこようかしらね、玉露

「僕は焙じ茶がいいから、このままで」

「………」

 

「あんた、外郎とか何でもいいから茶菓子持って来なさいよ」

「……あの…、」

「僕はいいよ、お煎餅持参済み」

ぱりぱりぱり。 

「………」

 

「あ、にゃんこ発見」

「……………」

 

…ああ、今日も平和だな。

 

 

 

「…菖蒲様は……何茶派ですか…」

「突然どうしたのです、忍」

ぼそり、と呟けば、邸の主は驚いたようだった。

 

「手前は焙じ茶派で…」

「そうですねぇ…緑茶が好きですね。特に宇治茶でしょうか」

「……そうですか…」

「おや、元気のないこと」

「………」

憂いすら隠せず、ありありと不満を晒す侍従。

 

 

玉露…煎餅…」

ぼそり。

「ああ、玉露も煎餅も好きですよ」

さらり。

「……………」

しゅん…。

 

(しのび)はやり場のない悲しみに打ち拉がれる他なかった。

 

 

 

「…村崎殿」 

「…む、どうしたのだ」

村崎武家屋敷屋根より、この邸宅の主を見下ろす。

 

「村崎殿は…何茶派ですか」 

「…何故今それを問うのか」

ああ、ええ、ごもっとも。

 「何かと不安で…」 

「…茶についての不安とは何ぞや」

 「とにかくお答えいただきたい……」

「む…すまぬ、余計な詮索をしてしまったな。拙者はアレだ。宇治茶だ」

忍はあからさまに肩を落とした。

 

 

「ちなみに言っておこう、菫丸も宇治茶派だ」

 

 

 

 

 

 

それで、(しのび)は苦い緑茶を渋々啜ってみたのだった。