project×黒銀- 「エリスと科学者」

腐注意!!

しかしながら特にベタな表現はありませんが、

男性同士間の愛が根本的に駄目な方は閲覧をお控えくださいまし(^^;)

 

((※お話の中でとある人が死んでしまいますが、

パラレルワールド的なアレなので本編とは全く関係ありませぬ(^^)

 

あと結構短めなので30秒で読めるかも(笑

 

 

 

 

 

これは、愛する人を失った、とある科学者のお話… 

 

 

***

 

 

小鳥の囀りと共に、カーテンの隙間から柔らかな日が差し込む。

寝台の上、科学者はひとり目を覚ました。

「………、」

彼はおもむろに上体を起こすと前髪をかき上げ、自身の額に手を当てる。 

「……頭、痛い」

ぼそりと呟けば、どこからか金髪碧眼の青年が現れた。

その手に薬と水の入ったグラスを載せて(・・・)

 

 

「キノールさん、おはよう。頭痛薬だよ」 

科学者は薬を受け取り、器用に手の平の真ん中に載ったグラスを見て苦笑する。

「…エリス、グラスはね、こう持つんだ」

一度受け取った水を返し、正しく持たせる。

「うん、わかった」 

「そう、それでいい。ありがとう」

青年は薄く笑みを浮かべ、科学者にその水を正しく手渡した。

 

 

「……エリス」

立ち去ろうとしていた青年は振り返り、微笑む。

「何だい?キノールさん」

「…今日は、散歩にでも行こうか」

科学者もまた微笑む。しかしそれはひどく悲しげに見えた。

「そうだね。天気もいいし」

青年の張付けたままの薄い笑顔に、科学者の顔は一層歪んだのだった。

 

 

***

 

 

 

「愛してる」

弱々しくも凛々しく、耳元で微かに、だがはっきりと聞いた。

 

ただ抱き締めるより他に成す術もなく、信じられぬといった面持ちの科学者は狂気と絶望に苛まれる。

 

 

———————————————……

 

 

その時、仰向けの身体、丁度真ん中辺りを剣が刺し貫いた。

悲鳴を上げる間もなく、また余力も残らぬ故、左腕のない彼は血を流して濡地に仰臥する。

 

 

「あ゛ぁあぁぁぁあぁぁ…!!ジャック、ジャック…!!」

 

 

動かなくなった彼から強引に引き剥がされる。

科学者は何度も何度も、喉がつぶれる程に、痛々しい程に彼の名を叫び続けた。 

 

国の王はその仮面を剥ぐことなく、冷酷に言い放つ。

「孤高の科学者よ、惑うな、これもさだめ。助手は自ら死を選んだ」

言葉はただ遠く、科学者の耳に谺する。

まるで至誠の彼の死を嘆くかのように、その日国中に降り注いだのは200年来の氷雨だったという。

 

 

***

 

 

 

「エリス…」

その名を確かめるように、柔らかな金糸を梳く。

「なあに、キノールさん」

溢れる涙にも構わず、何かに囚われたように、一心に。

「…どうしたの?何故泣いているの?僕はどうしたらいい?」

「………ジャック(・・・・)…」

青年は戸惑いの表情を見せ、科学者は尚も頬を濡らしながら微笑みかける。

「…愛してるよ…」

 

青年は科学者の唐突な言葉に思考回路を巡らせ、一瞬怯んだようにも見えた。

「……“僕も”」

 自分でも何故、こんなプログラムを追加したのかわからない。

我ながら悪趣味が過ぎる。

「…“僕も、愛してる、キノールさん”」

「うん…ありがとう…」

科学者は苦笑しつつ、青年を抱き寄せ、ありったけの愛を込めて抱き締める。

「ジャック…」

青年の耳元で、愛した人の名を囁きながら。

  

 

いつか、会いに行くから。

 

その時まで、どうか、愚かな僕を許しておくれ。

 

 

 

「…キノールさん」

青年の声は穏やかだった。

身体を離し、顔を見ると、何故か彼は泣いていた。

「……?故障かな?」

科学者は青年の瞼をなぞり、損傷した部分を探す。

 

だが、青年は首を横に振る。

「僕は、彼にはなれない。僕は貴方に愛されない」

  

科学者は一瞬鼻白んだようだったが、青年を再び抱き寄せると宥めるようにこう言った。

 

 

 

 

「大丈夫、君は僕が作ったんだから。それだけで充分じゃないか」