百花斉放、村崎継承歌 3-3

……はて、

  

二、三度、鈍い音がした。

 

 

「白藤…、」

そっと目を開けば駕籠より降立つ優男、能面に湛える微笑は妖艶に。

幟持ち、朱槍は()(がなえ)、地に伏す。

 

「殺しですか…」

幟をなぞる流麗な指先から目が離せない。

「…貴殿、何者」

やっとの思いで問うがしかし、返る言葉はなかなかに的を射ず。

 

 

「さて…白藤、特技は」

「………は」

 

……特技。

 

 

「…何かないのですか」

「………」

唐突に何を。

何がしたいのだかさっぱりわからぬ。

「……か…割烹…」

「そうですか」

罪人の困惑も黙殺、黒髪の優男はかんざしを揺らし、柔和に微笑んだ。 

「本日より、貴方は我が邸にて執務すること。来なさい」

 

 

 

「…菖ちゃん」

邸主は首を傾げ、微笑む。

「あたし…昔の方が良かったかしら」

不意をつかれたように目を見開き、戸惑いつつも手を取る主。

「不服ですか」

「そうじゃないけど」

昔は、まぁまぁ格好良かったんだけどなぁ…。

  

「…菖蒲様」

息を切らせる侍従の顔にうっすら走る、朱色。

「初雪にございます」

 …そう、貴方の大好きな。

 

 

思い出しては漏れる溜息に溺れ、在りし日の貴殿を想う。 

あんなにも募らせた怨恨は疾うに晴れた。

私もとんだ馬鹿者だな。

 

 

見上げる寒空に散る白。

季節は罪人の顔に綿欠ひとつ落とし、その頬を一筋、濡らしていった。