project×黒銀- 「烏天狗」

「いたぞー!向こうだー!」

「ひぃぃぃぃ!」

頭から生える二対の朱羽、桃色の癖髪。

足まである謎の白い洋服をはためかせ、ばたばたと逃げ回る男がひとり。

「怪しい奴!妖怪!捕まえろ!」

「だからぁぁ!僕は人間なんですぅぅぅ!」

必死の形相はしかしひどく滑稽、見守る(しのび)も思わず笑う。

「何してんだか…」

さて、そろそろ助けてやりますか。

 

 

「いつもごめんねぇ…」

烏天狗は苦笑い、これは毎度の光景。

「いや、面白いからいいよ」

素っ気なく返す(しのび)も御馴染のよう。

困憊の烏天狗を適当に(!)抱きかかえ向かうは主の元、黒い影が家々の屋根伝いに駆けてゆく。

「久々の来客だ、きっと菖蒲様も喜んでくれるさ」

侍従の顔もなかなかに晴れていた。

 

 

「おや、烏天狗様ではありませんか」

「はい、お久し振りです菖蒲様」

互いを取巻く雰囲気は極めて温和、邸主も茶菓子を差し出す。

と、

「どーーーーーーん!」

「うわぁ!?」

突如、背後からの衝撃。

「ちょっとあなたどうしたのよ。暇なの?やぁねぇ働きなさい刺すわよ」

「あ…艶之臣さん…」

別に暇じゃないけど…とは言わないでおくのが賢明か。

「…あ、今日もお綺麗で……」

「あら、突然何よ。カマは褒めときゃいいって思ってんでしょ」

すぱこーーーん!

「いだっ」

後頭部への鋭い一撃。

「秘技・御玉杓子!いやん」

いやん、じゃないだろう。

「いきなり殴らないでほしいな…」

「不意打ちじゃないと意味ないでしょ」

「はぁ…」

一方、その間もにこにこ見守る華菖蒲。

「楽しそうで何よりです」

にこにこにこ。

 

 

…こうして、茶会は賑やかに始まった。