百花斉放、村崎継承歌 3-2

頬を撫でる風は冷やか、落ちた葉も乾き、踏締めては小気味の好い音をたてる。

過ぎ行く時季に移ろう華、時を経て尚、片時も離れぬ記憶が疎ましい。

ふと握り締めた両の手首、嵌まる鉄の輪に、もう二度と見ることのないお顔を思い浮かべ、漢はひとり嗤う。

 

貴方が好きだった、冬。

今年もまた、雪が降る…、

 

 

 

 

『白藤蓮角 生国−蝦夷 罪状−人殺し 刑罰−見せ槍』

罪人の詳が(のぼり)に記される。

幟持ちが掲げると、周囲の見世屋は順に閉まりゆく。

「ちょいとあんた、殺しだとよ!まぁ珍しいねぇ、ここんとこ平和だったってのに」

「あんれまぁ、見せ槍かい、こりゃ気味が悪い。母さんや、店は閉めたかい」 

一体何を言っているのやら。私が一番気味悪いわ。

何たって、今、此処で、死ぬのだから。

 

「最期に何か欲しいものはあるか」

「ふん、笑わせるな。店はみな閉められたではないか」

もう、何もかも、どうでも良い。皆死んでしまえ。

床店は全て閉められ、代わりに四方から見物人が沸いた。

「…馬鹿にしおって」

本来もう一本交えられるはずの十字の木柱、(はりつけ)にされ、自尊心などは疾うに踏み躙られた。

…私は女子(おなご)ではなかろう?

最後の最期まで、辱めてくれたものだな。のぅ、殿よ。

 

後ろ手に縛り上げられる。締上げる痛みもただ、憎しみに変わるだけ。 

いよいよ、この世とはお別れだ。 

ああ、全てはまやかし、気付くまでは(うま)し國であった…。

  

首の白数珠が揺れる。

「これより、罪人の処刑を開始する」 

鼻先に交えられる槍と槍、これが見せ槍。

恐怖は既に怒りと消え、嘲笑が込上げるばかり。

私を弄び捨てた殿に対してなのか。若しくは浅はかだった自分にか。

もうわからない。

ああ、もどかしい、死ね。皆死ねばよいのだ。

  

朱槍の男は左右に二人、この両槍がこれから私の脇腹を裂き、肩を貫き、仕舞に喉を突き通す。

 

鈍い光を放つ穂先、消えたはずの恐怖が甦り、きつく目を閉じる。 

今、身体に穴が空き、臓腑が溢れ、鮮血も垂れ流すのだろう。

美しくない…、

 

……怖い。怖い。怖い。

嫌だ…誰か…、

罪人は歯を食いしばり、泪を流し、必死に嗚咽を押し殺す。

 

 

 

さあ、今、二対の朱槍が振り被られ……、