百花斉放、村崎継承歌 3-1

陶器の破片が、床に飛び散る。

「いやん」

だが、何故か愉快げに欠片を拾い集める長身の男…、

否、女性…否、男性。れっきとした漢。

「いやだわ、もう。街で新しいの買ってこなくっちゃ」

言葉とは裏腹、この漢、実に楽しそうである。

懐から小箒を取り出し、鼻歌まじりに床を掃く。

 

そんな時、火にかけていた薬缶がぴーっと鳴った。

 

 

 

「お兄さん、こないだのお皿、また割れちゃったのよ…」

市場は何とも賑やか。その中で、とりわけ人を集める屋台がひとつ。

「お、艶ちゃん!いつもどーも」

「わっ、艶之臣さんだぁ!」

「やだ艶藤様が?どこどこ?」

「母さま、艶藤さまがお越しになられているようです」

「艶之臣様ぁ!」

しかし皿選びに集中する漢の耳に、騒音は届かない。

「あんたのとこのは信用してるけどね、なにせ若殿様がお使いになるお皿なわけでしょ。もっときれいで丈夫なのはないの?」

「ああ、艶ちゃんの為ならいくらでも!こっちなんかはどうだい?」

「…言い忘れた、あんたのセンスは信じてないわよ」

「あれれ!こいつぁ参った!」

漢は屋台の店番との会話に花開かせる。その間も、注がれる視線は一切逸れぬまま。

「今日はお皿買いに来たみたい」

「昨日は箸置きを新調しにきたらしいね」

「明日も来てくださるのかしら!」

「どうだか、城務めならそれなりに忙しいんだろうよ」

周りの人集りはこの漢の話題で持切りの様子。

「じゃ、これにするわ。おんなじのをあと四つ頂戴」

「よっしゃ!毎度っ!」

 

被り笠のふちを下げ、妖艶に微笑むその姿はまさに女子(おなご)

高く束ねた長髪をしゃなりと揺らし、自然と裂け目を作る人の群れを抜け、漢は床店の並びを横目に立ち去った。

 

 

本日、雲ひとつない快晴であった。