百花斉放、村崎継承歌 1-2

秋風のにおいも美しき紅葉も、今はただ、辛い。

 

一人息子達ての頼み、突っ撥ねることもできず紅葉狩りに裏山を訪れたは良いが、どんなに見事な彩も、感慨に浸らせてはくれぬ。

 

もう一度、顔が見たい…。

景色を眺め歩くも、そればかりが巡り、鳥の囀りも、木々の揺れる音も、息子の楽しげな声すらも届かない。

意識のないままにひとつ、前を行く揺れる菫色に目をやる。

ああ、お前だけが。お前だけが証なのだ。

 

 

 

 

 

 

一引き、二運、三器量。

「萩屋のお紅、」

…そのうちの、運だけ。

 

 

待兼ねた奥泊、妾を召されしお方の、紫の髪の長いこと。

目にかかる前髪を左に分け、男性とは思えぬ程に手入れの行き届いた艶麗な髪。幾許か荒々しき言動も、その繊細な御心までは隠しきれぬ。髪を梳く長い指も、抱留めたひろい胸も、妾を息苦しくさせた。

「さて、このお紅をご指名なさった貴方、何が故」

武家とも無縁、風貌は祖末。しかし紫のお方はそれでも強く言い放ったのだ。

「其方が、美しかったからだ」

 

 

妾は中臈に成上がり、女中などからは疾うに“汚れた方”と呼ばれ、しかし然程気には留めず、大奥の一員を抜けた。