本編関連

忍の茶会(short)

「たまにはこうして茶を啜るのも、悪くないねぇ」 「本当、玉露じゃないのが残念」 「………」 軒吊家のお屋敷にて、三人の男女が細やかな茶会を開く。 「アヤメ様に貰ってこようかしらね、玉露」 「僕は焙じ茶がいいから、このままで」 「………」 「あんた、外郎…

「村崎さんちの虎次郎」

一匹の虎猫が、茂みから出てきました。 「虎次郎ー!朝ごはんでござるー!」 今日も、朗らかな声が村崎家武家屋敷に響き渡ります。 「なー」 「今朝はなんと拙者特製、猫まんまでござるよ♪」 「なー」 「む、そんなに嬉しいでござるか?良かったでござる!」…

初恋、破れたり(short)

何度も降掛かる、苦痛。 「お前は、そちら側に通じているのか」 腹を押さえて踞ることしかできず、呼吸もままならない。 「…貴方は…そのような…」 「穢らわしい。寄るな、下衆」 更に打撃を受け、支えきれぬ身体は力なく地面に転がる。 「………は…ぁ…、」 息が…

散蓮華(short)

食堂の卓上、ひとり泣き伏す赤橙に問う。 …お主、何故泣いている。 暗赤の袖を濡らし、肩を震わせ噦り上げる。その口からは嗚咽しか漏れず、全く状況が読めない。 むぅ…。 ひとまず、背に手をかけ軽く叩いてやる。 どうしたのだ、お主らしくもない。 すると…

忍、偲ぶ(short)

うら若き主の見目姿、初見参(ういけんざん)のもとに心奪われて久しい。 しかしその翳りの実像は憂き覚えの産物。 仄暗い夕刻、痛い程に目を刺す紅葉の深紅。 秋も深けた時分に遣り戸を叩く。 「…手前、軒吊忍は貴方の生をお守りすべく差遣わされ、此処に至る…